焼酎ニューヨークスタイル

ny-style13_thumb 焼酎大使スティーブン・ライマンさんの「焼酎ティスティング・ナイト」

ニックネームは「麹(Koji)」。ニューヨーク在住の自称、焼酎オタクのスティーブン・ライマンさん。2011年にニューヨーク・マンハッタンで行われた「Shochu & Awamori Tasting Contest」で全問正解の好成績で最終選考の8人に残った無類の焼酎好き。焼酎好きが高じて焼酎サイト「乾杯US」(http://kampai.us/)も立ち上げた。英語で焼酎と泡盛を語れる数少ない米国人の一人だ。そんなスティーブさんの本業はアイビー・リーグの名門コーネル大学でスポーツ医学を研究するサイエンティストという驚きの肩書きを持つ。

カウンターのお客さんとスティーブンさん。
カウンターのお客さんとスティーブンさん。

カウンターのお客さんと焼酎談義するスティーブンさん
カウンターのお客さんと焼酎談義するスティーブンさん

4月にこのコラムで紹介したマンハッタンのローアー・イーストサイドにあるレストラン「酒舞」(http://sakamai.com/)では、今年4月から毎週、スティーブンさんの「焼酎ティスティング・ナイト」が開かれている。店内の立ち飲みバー・セクションで、ハッピーアワーの午後7時から9時までの2時間、スティーブンさんが選んだ3種類の焼酎が1杯5ドルで提供される。
私が訪れた日は「十割り」(宝酒造)、「豊永蔵」(豊永酒造)、「赤霧島」(霧島酒造)の蕎麦、米、芋のバラエティーに富んだ3種類がティスティング・メニューとして並んでいたが、その時々で、3種類ずつそれぞれ違う芋焼酎やオーク樽で熟成された米焼酎、泡盛を揃えたりもするという。

イザカヤ・ミート・アップ・グループの面々、右端がマイケル・スコッティンさん
イザカヤ・ミート・アップ・グループの面々、右端がマイケル・スコッティンさん

この日、カウンターはスティーブンさんのファンのお客様で賑わっていた。ほぼ毎回「イザカヤ・ミート・アップ・グループ」(*注1)の仲間らと訪れるという、コンピューター・プログラマーのマイケル・スコッティンさんは「芋焼酎が好き、特に黒麹の芋焼酎が好きなんだ」とかなり、通な返事が返ってきたのには驚いた。「ウィスキーが好きな人には焼酎は受け入れ易いと思うよ。以前は日本酒を飲んでいたが最近はもっぱら焼酎派。焼酎は原料も覚えやすいのがいい。2010年に旅行で東京に行ったがその時は焼酎のことを知らなかったので日本で飲まなかったのが残念」と話す。

スティーブンさんとこの日、ティスティングメニューでサービスされた焼酎、左から、「十割」「赤霧島」「豊永蔵」。
スティーブンさんとこの日、ティスティングメニューでサービスされた焼酎、左から、「十割」「赤霧島」「豊永蔵」。

スティーブンさんの焼酎との出会いは2008年、マンハッタンの日本食レストラン「居酒屋・天」だった。毎週火曜日は焼酎のボトル20ドル引きという特別メニューがあり、友人と行ったのが焼酎との運命の出会い、最初に飲んだ焼酎は「いいちこ」だった。その年は毎週火曜日、1年間の間に35回、同店に通い焼酎を飲んだ(年間52週の内35週通ったとスティーブンさんは強調)、インターネットを活用しながらリサーチを重ね独学で焼酎の勉強をしたという。独自の焼酎ティスティング・ノートを「乾杯US」のサイトにもつづっている。「サイエンティストなのでね、勉強は好きなんだ」と笑う。そして「焼酎のジョン・ゴントナーになりたい」とスティーブンさん(*注2)
「日本酒は僕に甘すぎる、焼酎は口当たりがライトでリフレッシュなのが好き」。以前は、ウィスキーとイタリアの赤ワインを好んで飲んでいたそうだが、ウィスキーは食事と合わせて飲めない、イタリアの赤ワインはイタリア料理にしか合わない、どちらも間口が狭いが、焼酎は間口が広くどんな食事にも合い、幅広く楽しめるし、例えばニンジンやアロエなど、どんな原料からも焼酎は造れるのが魅力だと語る。また、米国人は麦焼酎を好む人が多い、特にウォッカを飲む人は麦焼酎、ウィスキーを飲む人は樽で長期貯蔵した麦焼酎、そして、テキーラやジンが好きな人は芋焼酎を好む傾向があるとスティーブンさんは分析する。

昨年の夏には「Shochu & Awamori Tasting Contest」で競い合った日本人と意気投合し、一緒に日本に行き福岡や鹿児島の焼酎の蔵を訪ね歩いた。5日間で8蔵を訪ね、約250種類の焼酎をティスティングしたという。今年、10月には九州の蔵で1週間ほどの焼酎造りの修行も予定している。
いつか、ニューヨークで自分の焼酎バーを持つのが夢とか。そのために「酒舞」で焼酎ティスティングの会を開きながら夢に向って模索している。

女性客に焼酎の説明をするスティーブンさん
女性客に焼酎の説明をするスティーブンさん

焼酎をグラスに注ぐ、スティーブンさん
焼酎をグラスに注ぐ、スティーブンさん

  • (*注1) イザカヤ・ミート・アップ・グループ
    ウェブサイトで「居酒屋で一緒に飲もうよ!」という呼びかけに集まったニューヨーカーのグループ。

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  • (*注2) ジョン・ゴントナー
    英語で日本酒を語る日本酒伝道師、日本酒ジャーナリスト。国内外で英語で日本酒セミナーを開催、多くの日本酒愛好家を世界に送り出した。ゴントナーさんに学んだ子弟が海外で日本酒普及に活躍している。
    ゴントナーさんのサイト(http://www.sake-world.com/index.html

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ライター 石黒かおる

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