「うまい!が集う」第8回…鮫島 吉広氏
「本格焼酎を理解し、何をやれるか考えられる生徒を育て、世界の蒸留酒となるよう繋げていきたい」
-日本で初めて設立された大学での焼酎学講座(鹿児島大学)の教授に今年の10月、就任されましたが、どのような経緯だったのでしょうか?
鮫島氏:今までは大学というのは「教育と研究の場」でした。しかし今日、それに「社会貢献」を加えた『三本柱』が求められるようになりました。それと同時に、独立行政法人になった大学がいかに自校の『特色』を出すかということを考え始めた。鹿児島大学の特色は?ということで様々なところから「焼酎」という構想が浮かび上がり、去年の春から焼酎学講座を作ろうという話が出たのです。
-現在(10月初旬インタビュー)の状況を教えてください。
鮫島氏:来年、2007年の4月から現在の2年生である3年生に向けて授業を始めます。その後期、10月から焼酎学講座の研究室に生徒が入ってくるという予定です。学科の人数が約60名なので、10名くらいかな。今現在は講座の建物の設計や配置、設備など、それと4月からの授業のカリキュラムを検討、具体化しています。
-どのような授業をしていくつもりですか?
鮫島氏:まずは焼酎の製造技術ですが、それだけではなくて、歴史、文化、開発など焼酎全体を体系的に勉強してもらおうと思っています。今、酒業界は目まぐるしく動いています。メーカーの教育だけではどうにもならないことがあり、社会の動きと連動するためには焼酎だけではなく、幅広く他のお酒も知らなくてはならない。社会情勢や国際的な動きを広い目で見て、その中から生徒自身のやりたいテーマを見つけていって欲しいですね。もう一つは「薩摩焼酎」というブランドのイメージを確立していくようにアピール、開発して、世界の蒸留酒となるよう繋げていければと思います。
-どのような生徒を育ててゆきたいですか?
鮫島氏:WTO(世界貿易機構)やGATT(関税と貿易に関する一般協定)に日本の蒸留酒である焼酎は「酒税の大幅増税」を承諾し、多大な影響を受けたのですが、結果的には逆にそれからも焼酎は伸び続けた。例えばそういう流れを教えることで、どういう姿勢で臨んでいけば良いか、将来どういう目標をどこに置くのか、ということを考えてほしいです。焼酎の国際化ということを考えるとすると、相手の国がどのような酒を造っているかを知らないと外国向けの商品は出来ない。アジアの蒸留酒として焼酎を造っていくとすると、アジアの連携なども視野に入れることも必要になってくるかもしれない。様々なヒントがある、知識として得たものを基にして、「焼酎を理解し、何をやれるか自分で考えられる生徒」になってもらいたいですね。
プロフィール
鹿児島県加世田市出身。昭和46年京都大学農学部食品工芸科卒業後、ニッカウヰスキー(株)に入社。その後帰鹿、薩摩酒造(株)に入社し、常務取締役研究所長兼製造部長を務める。平成13年より焼酎粕処理施設サザングリーン共同組合代表理事も兼任。今年8月に薩摩酒造(株)を退社、同10月、鹿児島大学農学部焼酎学講座の教授に就任した。著書には『だれやめの肴 焼酎呑んよもやま話』『焼酎の辞典』(共著)他、論文、エッセー多数。