第24回 3つ美味しい熊本県
700年の間、延々と続いてきた相良藩。初代相良藩主長頼(ながより)が球磨、遠州(えんしゅう)、飾摩(しかま)、豊前(ぶぜん)上手の諸郡を源頼朝から賜り、人吉城に入城した後の1199年、人吉城の修築を開始しました。その時に三日月紋様の入った奇石が出土。以後人吉城は繊月城(せんげつじょう)と呼ばれるようになりました。
人吉駅から徒歩15分。歴史を感じる石橋を渡り相良神社へ。その奇石の模型(顔くらいの大きさの濃い灰色の石の中に浮かぶくすんだオレンジ色の繊月紋様が確認できます)を見ることが出来ます。そのすぐ近所、『球磨焼酎』という名前を広げるために創業された蔵元さんを訪れます。
「球磨焼酎、27蔵元の製品からバランスの良いものを選び自社でブレンドしています。ブレンドする事によって香りが均一化し、まろやかになります。減圧蒸留の商品が主流ですね。米という原料は減圧が向くタイプではありますが、最近は米の風味が強く出て、こくのある常圧蒸留の製造に目が向けられています」
平成7年10月3日に『球磨焼酎』の地理的(産地)表示の申請が受理されました。球磨焼酎の定義として「米麹及び球磨川の伏流水である熊本県球磨郡または人吉市の地下水(球磨の地下水)を原料として発酵させた一次もろみに米及び球磨の地下水を加えて、更に発酵させた二次もろみを熊本県球磨郡または人吉市で単式蒸留機で蒸留し、かつ容器詰めしたもの」とされています。現在28場の蔵元さんが『球磨焼酎』の表示を認められています。
「地理的表示が出来るようになって10年、実は製造蔵自体が『球磨焼酎』と表示していない場合が多いことが気になりますね。『純米焼酎』と表示している。純米焼酎だったら球磨、人吉地方でなくても製造できます。せっかく産地呼称をもらったのだからもっと『球磨焼酎』という名称を28の蔵全体でアピールしていきたいですね」と蔵元さんは語ります。
2005年秋現在、球磨、人吉地方以外の熊本県の各地方には10場の本格焼酎蔵があります。その中で本格焼酎専門蔵は3社。球磨地方以外は清酒とともに歩んできたところが多いようです。清酒蔵の焼酎をはじめに専門蔵の焼酎、そして地理的表示がゆるされた球磨焼酎、3つの美味しさが楽しめます。熊本県の本格焼酎、あなたはどのタイプを利きたいですか?