春秋謳歌

第12回 飲めば心は桜色

第12回 飲めば心は桜色

 「見て楽しい・香ってうれしい・飲めば心は桜色」、焼酎学講座の学生が造った焼酎のキャッチコピーである。ほんわかと暖かいぬくもりを持った焼酎を造りたい気持ちが伝わってくる。もうすぐ桜の季節に、初めての焼酎学講座の卒業生が社会に巣立っていく。目指すのは酔っ払いの酒ではなく、生活に潤いと幸せをもたらす酒造りであってほしい。そして酒は社会生活の潤滑油としてだけではなく、酒税を通して日本国の礎を築いてきたことも誇りとしていい。
 などと、贈る言葉を考えていたとき、酒の総元締めでもある財務大臣のとんでもない映像が飛び込んできた。財務大臣がこよなく酒を愛する人であることは歓迎である。その上で、酒が健全な社会に貢献することを実証する人であってほしかった。
 無礼講は上に立つものには通用しない。古来、日本の無礼講は、ハレの日を設けて下々の不満を発散させ、たまったマグマを放出する為政者の統治手段として意味を持っていた。
 毎日がハレの日になった今、連日の無礼講が許されるはずがない。ましてや、範を垂れる立場のものであればなお更である。酔っぱらいは酒の力で元気になって醜態を晒すのではない。酒を飲むと理性が麻痺して、もともと持っていた本能が表に出てくることによるものである。したがって、醜態は自分の本性を現したものであって、酒ぐせは直るものではない。
 学生には、あの映像をしっかりと胸に刻ませることにしよう。酒は飲むものであって飲まれるものではないこと、酒の上での醜態はもはや許されないこと、恥をさらすことは最大の屈辱であることを教える格好の教材である。
 「飲めば心は桜色」、いつの間にか学生の方が酒道の真髄を悟っていたようである。

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