春秋謳歌

第49回 女性杜氏の造る焼酎

第49回 女性杜氏の造る焼酎 最近、酒の世界も女性抜きには語れなくなってきた。居酒屋での女子会の飲みっぷりはいうに及ばず、女性が企画したかわいいデザインの低濃度の焼酎が登場し、女性杜氏の話題も珍しくなくなってきた。

 いったいいつごろから酒の世界で女性が目立ち始めたのだろう。高田公理氏によれば、日本の既婚女性に占める専業主婦の比率が54%でピークに達するのが昭和50年で、その後、“奥”様は減少し、女性の社会進出が続いたという。

女性限定の焼酎イベントは盛況

女性限定の焼酎イベントは盛況

 では焼酎の世界ではというと、筆者の経験では平成元年以降のことのように思 える。この頃、かわいらしいボトルで香りのいい芋焼酎が発売されたとき、テレビ局の女性レポーターが、“これまでも焼酎は好きでしたが、この焼酎ができたおかげで酒屋に堂々と買いにいくことができるようになりました”と語っていたのを思い出したからである。芋焼酎の場合、昭和の終わりまでは酒は男性のものであって女性を意識したボトルデザインや優しい風味の焼酎はほとんどなく、若い女性が酒屋で焼酎を買うには勇気がいったのである。

 薩摩は男尊女卑の国とよく言われる。実際、“女だてらに焼酎を”という雰囲気があった。明治中期に書かれた「薩摩見聞記」には、“公式の席においては料理はじめ婦人をして為さしめず、男子袴をつけて給仕を為す”と書かれている。だがこれはあくまで表向きであって、家庭では“薩人男女老少となく皆これを用い、往々二、三升を飲む者あり。五合くらいは誰にても飲むなり”とある。女性はもともと飲めたのに、男を立てて遠慮していただけにすぎない。
 抑えられていた分、今、女性の逆襲が始まっているような感がある。焼酎は男、男が好きなのは女、女が造る酒は男が惚れる。
女性杜氏は女性向けの焼酎を作っているのではない。男性を虜にする焼酎を造っているのである。

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