第2回 昔の文献にみる本格焼酎&泡盛
次々と木々に生い立つ新葉のみずみずしさ、そこにきらめく無数の光…初夏の到来を告げるものです。外を歩くのも気持ちのよいこの季節、いつもより長めの散歩から帰ってくれば、「さあ、何かすっきりした酒で一杯!」と催促してみたくなります。
ちょっと珍しい、夏の焼酎の楽しみ方を、江戸後期に書かれた『守貞漫稿(もりさだまんこう)』に読んでみましょう。
「京坂、夏月には夏銘酒柳陰(やなぎかげ)と云ふを専用す。江戸は本直し(ほんなおし)と号し、美琳と焼酎を大略これを半ばに合せ用ふ。…ともに冷酒にて飲むなり」。
みりんと焼酎を半々で混ぜたものを、江戸では「本直し(ほんなおし)」、京阪では「柳陰(やなぎかげ)」と呼び、冷やで飲んでいたことが分かります。とくに「柳陰」は“専用す”とまで書かれていますから、京阪の夏場の銘酒として親しまれていたようです。
この時代、焼酎といえば一般的に粕取り焼酎を指しています。すっきりとした焼酎に、みりんでほどよい甘みをつけ、喉越しのよい夏向きの飲料としたのでしょう。清酒のような醸造酒にはない、楽しみ方です。
最近は上質のみりんも出回っていますから、とっておきの粕取り焼酎と一緒にいかがでしょうか。来たる夏に思いを馳(は)せながら、氷を浮かべて味わうのも良さそうです。