春秋謳歌

第53回 幸村が愛した焼酎

第53回 幸村が愛した焼酎

場所は鹿児島県南九州市頴娃町牧野内の雪丸集落の山中。いかにも戦国武将が隠れ住むにふさわしいと思わせる鬱蒼とした杉木立の中に目指す墓があった。真田幸村の墓と伝えられているものである。

今年のNHK大河ドラマは幸村が主役の「真田丸」である。幸村は「大阪夏の陣」で戦死したが、頴娃村郷土史によれば、大阪夏の陣のあと秀頼を守って薩摩に逃げのびこの地に住んだという伝説があり、集落名の「雪丸」は「幸村」がなまったものだという。大阪夏の陣で幸村とともに戦った薩摩の武将が、「真田日本一のつわもの、いにしへよりの物語にも(これほどの精兵は)これなき由」と国元にあてた手紙のなかで真田兵の勇猛ぶりをたたえているので、「薩摩落ち伝説」が生まれる背景はあったようである。

伝 真田幸村の墓

伝 真田幸村の墓

紹介したいのは幸村が大の焼酎党だったことである。関ヶ原の戦いで西軍に属した幸村は高野山麓の九度山に配流の身になるが、無聊を慰めるためか姉婿に焼酎を無心する書状を送っている。それは「その後ごぶさたをいたしております。(使いの者に持たせた)この壺に焼酎をお詰めくだされ。一杯詰めてこぼれぬよう壺の口をしっかり目張りしてくだされ。壺ふたつの焼酎の件よろしく願いまする」(神坂次郎「真田幸村」、NIKKEI BUSINESS 1991年7月8日号)というもので、並々ならぬ焼酎への愛着が感じられる。幸村は焼酎を飲みながら、冬の陣の到来を待っていたのである。伝説によれば、薩摩に落ちのびた秀頼と幸村は島津義弘公に丁重に遇されたという。「頴娃の山伏」と呼ばれた幸村は、霊峰開聞岳を望む山地で悠然と、焼酎の無心の心配もなく、酔眼の中に戦場を駆け巡る夢を見ていたのかもしれない。幸村の焼酎好きを知ってかどうか、「伝真田幸村の墓」には焼酎のボトルが供えられていた。
「真田丸」の晩酌シーンに焼酎が登場し、焼酎ブームの起爆剤になることを願っている。

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