最終回 本格焼酎&泡盛・産地巡りの旅
本格焼酎&泡盛産地巡り。今回で最後となりました。北は北海道、南は沖縄まで1年をかけて、各蔵を巡りました。
春、本州では桜もまだ咲いていない頃八丈島へ。アロエに囲まれた空港に驚き、くさやの味と島焼酎の相性の素晴らしさにまた驚きました。沖縄では首里三箇(鳥堀、赤田、崎山)の歴史と古酒・仕次ぎの大切さ、そして日本最西端与那国島の波の激しさに、奄美での雨に濡れた深い森の力強い匂いと対照的な、黒糖焼酎の茶色い醪(もろみ)の甘い香りは今も思い出します。
夏、関東では粕取り焼酎の貯蔵などの違いによる風味の多様性に感心し、高い空の下飲んだ北海道・北の芋焼酎(じゃが芋)の飲み易さにいつの間にかお代わり。うだるような暑さの大分では巨大なタンクの中、1つの生命体のように蠢きながらの発酵する醪に後ずさりし、米、とうきび、そば、麦、もち米、果てにはピーマンなど、多様な原料で焼酎を製造している宮崎。東海・岐阜の蔵元さんで味見した、脳みそを揺さぶられるような粕取り焼酎の味。灘、伏見で醸される個性の違う日本酒と柱焼酎(粕取り)に歴史を感じました。
秋、山々の連なる、信州・長野で30年前に結成された信州蕎麦焼酎グループの軌跡と復活の夢を。北陸・福井で食べたカニ御飯(ほぐした越前蟹を温か御飯の上にのせて醤油をちらり)と湯割り粕取りの新しいハーモニー。熊本県・球磨焼酎の驚くべき歴史、人々のしたたかさと焼酎に対する愛情に唖然とし、鹿児島では芋と鹿児島人の絆と歴史を、そして芋焼酎業界のこれからのあるべき姿を感じました。
冬、東北・宮城では雪の降る中、近未来型電子レンジ的蒸留機で造られた全く新しい風味の華やかな粕取り焼酎を堪能し、麦焼酎発祥の地・長崎県壱岐島では米麹の甘みが特徴の麦焼酎と壱岐郷土鍋・ひきとおしの素晴らしい相性に舌鼓、九州北部・福岡では粕取り焼酎は「米→酒+酒粕→焼酎+焼酎粕→肥料」という地球に優しいリサイクル農業だと知り、中国地方・広島の蔵元さんは「追われる立場(九州)より追う立場(九州以外)のほうが面白い」とにんまり。四国・愛媛ではこれからの本格焼酎の課題を聞かせて頂きました。
様々な蔵元さんのこだわりや考え方、様々な土地の歴史と風土、それを体感し、味わう。全てのことが本当に勉強になりました。百聞は一見にしかず。まさしくそれなのです。是非皆さんにも産地を訪ねてみてほしい。そして、本格焼酎&泡盛がこれからも愛されていくことを体で感じ取れたのです。