本格焼酎&泡盛・産地巡り

第29回 風味満点の粕取り焼酎

 新幹線の窓から降る雪が見えてきます。東京から約2時間、雪の仙台に到着しました。そこからまた電車で塩釜へ。神々しい迫力を持つ塩釜神社をぬけて蔵元さんへ到着しました。

電子レンジ的蒸留機、設置工事はスチームタイプより簡単

電子レンジ的蒸留機、設置工事は
スチームタイプより簡単

 「2年前から粕取り焼酎を製造しています。粕のほぼ100%は魚の粕漬けに利用されていましたが、試験的に製造した焼酎がまたたく間に売れてしまった。うちの日本酒はかなり精米歩合が高いので、その吟醸香を出すためにも減圧蒸留を利用しています。スチームタイプの蒸留機ではなく、大きい電子レンジのようなもので蒸留するため、籾殻も入れる必要が無く綺麗な、香り高い焼酎になっています」。
 大きい電子レンジ??是非見なければ!と蔵元さんに案内して頂きました。蔵にひっそり立つ、今までに見たことのない形の蒸留機。大きさも小ぶりです。
 「出来立ての酒粕だけを容器に小分けし、台(写真:バネのようなもの)の上に置きます。台を半円の中に入れ蒸留スタートです。熱源としてマイクロウエーブを使っているので内側から温まり、粕全体からアルコールが取れます。減圧ですので約40度で沸騰してゆきます」。
 それでは一口。吟醸酒を凝縮したような香りが鼻の中を突き抜けてゆきます。飲むとアルコール度数の高い日本酒特有の甘さと良質の酒粕の香り高さが交じり合い、素晴らしい風味を奏でます。本当に美味しい粕取り焼酎です。
 「でも香りが高いからこそ食中酒には向かないと思います。デザート的な感覚ですね。食中には日本酒を飲んでいただいて、寝酒にこれ。冷凍庫に入れてギンギンに冷やし、トロッとさせてもいいですね」と蔵元さん。

 せっかく近くに来たので日本三景の一つ、松島まで足を伸ばしてみました。ホテルの近くに酒販店さんを発見。覗いてみると、女性の店員さんが忙しそうに働いています。お話を聞いてみました。「休日は色々な蔵元さんを回っています。会って話さないと、それぞれ蔵の意気込み、気持ちが分からない。勉強のため、カツを入れてもらうためにも必要な事だと思っています」と嬉しそうに語られます。酒販店に応援され、素晴らしい日本酒、本格焼酎を造り続ける蔵元さん。陸奥・宮城、素晴らしい酒処です。
 旨味満載、クリーミーな牡蠣をたっぷり堪能した後はホテルでひっそり読書です。片手には先ほどの酒粕焼酎。芳しい香りに時間はゆっくりと流れていきます。この焼酎、誰にも教えたくないな、と思ってしまったのでした。

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