第66回 焼酎神・奉斎式典
焼酎の秋はノーベル賞の秋。今年は本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞した。筆者も似たような名前?の賞をいただいたことがある。日本醸造学会所属の若い研究者たちの選考による醸造文化賞で別名をノーメル賞という。ノーメル賞をいただいたものがノーベル賞受賞者を新酒でお祝いするのも乙なものと一人でお湯割りの盃を重ねた。本庶先生は有力なノーベル賞候補として知られていたが、周りの人は祈るような気持ちで受賞を待ち望んでいたに違いない。
人は折に触れ神に手を合わせたくなるものである。焼酎造りが始まるときも一緒である。盆が過ぎ秋の気配が漂う頃、作り手たちは事故がないよう、台風が来ないよう、良質のサツマイモが豊作でおいしい焼酎ができることを、神様にお願いする。ある蔵元はボイラーの前に神棚を拵え祝詞をあげてもらう。あるいは近隣の神社にお参りする。森羅万象に神が宿る日本では御神体の神徳に関係なくなんでもお願いするが、これまでは焼酎神を祀る神社がなかったから仕方なかった。
日本には酒造業者があがめる酒神社は多く存在する。その由来は田に豊穣をもたらす水の神や、稲穂の神に由来するものが多い。だが、五穀豊穣の神を拝んでも、五穀の中にサツマイモやサトウキビは入っていない。神話に登場する酒の神は米から造る醸造酒の神であって、当然ながら蒸留酒の神はいない。何とか焼酎の神はいないかと探したところ、ここにいるよと言わんばかりに登場したのが竹屋神社だった。その理由は本稿(64)で紹介した。この神社に焼酎神を奉斎する式典が9月9日に執り行われた。神楽殿には焼酎神と書かれた仕込甕が供えられ、焼酎神の神札も作られた。焼酎神社としての新たな旅立ちである。焼酎神のご加護を得て、焼酎の研究者が本当のノーベル賞を取ってくれることを祈願しよう!