第12回 昔の文献にみる本格焼酎&泡盛
もうすぐ春本番! お酒の世界も華やかさを増してきました。萌え出る草花を連想させる淡色のラベルがずらりと並び、春限定のフレーバーも登場します。バーに入れば桜色のカクテルを勧められ、心は乙女のように浮き立つものです。
最近では、本格焼酎や泡盛でも春めくアレンジを楽しむことができます。梅酒のように、お気に入りの本格焼酎で造るイチゴ酒、シークヮーサーの代わりに夏蜜柑やはっさくを使ったカクテルもさわやかな味わいです。
「いやいや、もっと渋いのはないのかね?」という方に、「イモ酎」をおススメしましょう。芋焼酎ではありません。一七八九年(寛政元年)版の『甘藷百珍』に書かれたサツマイモ風味の焼酎というべきものです。
まず、生サツマイモをすりおろして水に入れ、布を張ったごくごく目の細かいふるいで漉します。イモの粉がよどむその汁を鍋で煮、米焼酎と混ぜると出来上がりです。その味わいは“銘酒のごとくなるなり”と絶賛の注書が付いているほどです。
上質なサツマイモ粉は“葛の代りにつかひて吉野葛の上品に勝れり”(同書)とあります。トロリとしたやさしいイモの甘みが、米焼酎の酒精を和らげてくれる「イモ酎」は、まさに和製サツマイモカクテルと言えるでしょう。
粉を製するのは寒中ほど良いとのこと、まだ水が冷たいこの時期に挑戦するのがよさそうです。「透明グラスではなく、ぐい飲みで供するイモカクテル。友人らはどんな顔するかな!」…とニヤニヤしながら努力のひと手間、我ら本格焼酎&泡盛党なら頑張れそうではありませんか?