第8回 海と空。石垣島とどなんの泡盛
那覇空港から1時間弱。八重山諸島の中心地、石垣島に到着しました。八重山諸島は32の島々から成る諸島群(有人島は12)で、沖縄で2番目に大きい西表島と3番目の石垣島、日本最西端の与那国島以外は自転車で周れてしまうくらい小さい島々の集まりです。
沖縄本島より南にあるため更に蒸し暑く、空気の質も違います。石垣島の蔵元数は6つ。市街地にある蔵もあれば、海のすぐ近くにある蔵もあります。沖縄本島に比べ、規模も人数もこじんまりとした蔵がほとんどです。透明で清涼感のある三合瓶泡盛を片手に蔵元近くの海岸に行きました。雲の合間からうっすらと見える夕焼け、隣には琉球グラスに入ったロックの泡盛。茫と座り、冷たい泡盛をちびり。本当の至福の時でした。
次の日は石垣島からフェリーで4時間、愛称どなん:渡難(渡り難い)、与那国島に向かいます。途中から晴れ間が見えてきて、フェリーの外に広がる深い藍の色に暑さも忘れ、見入ってしまいます。お弁当はジューシー(沖縄風炊き込みご飯)と肝臓のためにうっちん茶(ウコン茶)。少し油っぽいジューシーにペットボトルの色を黄色く変えてしまうほどウコンパワー全開のうっちん茶。これが沖縄の晴れた空の下には合うのです。船が島に近づいてくると、沖縄らしくない雄雄しい崖とそこに当たる白い荒波が見えてきます。渡難(どなん)の意味が分かったような気がしました。
『李朝実録』、1477年の記録で、朝鮮人が与那国島に漂着しています。その時点で与那国には清の酒(蒸留酒)は無く、濁酒(口噛み酒)しかない。いくら飲んでもちょっとしか酔わなかったそうです。それが今では日本で一番アルコール度数が高いお酒、「花酒」が製造されています。蔵数は3つ。米原料で黒麹菌を使い、単式蒸留で造る泡盛そのものには違いないのですが、酒税法で泡盛はアルコール度数45度以下と決められているため、60度の花酒は「スピリッツ・原料用アルコール」と表示されています。蒸留初期の度数の高い泡盛のみを製品化したものです。一口含むと強い酒特有の刺激がくるのですが、その後に甘さが口中にトロッと広がります。目をつぶり、ゆっくりと楽しみたいお酒です。
地元の生活にピタリと溶け込んでいる八重山の泡盛。石垣では石垣産泡盛、与那国では与那国産泡盛を。この地に来て、また泡盛の旨さ、美味しさを再確認することができたのです。