第13回 前線南下中?北海道のじゃがいも焼酎
東京から飛行機で約1時間半、新千歳空港から電車を乗り継ぎ約6時間、網走に向かいます。東京はうだる様な暑さが続いていますが、網走駅はひやりと気持ちの良い風が流れてゆきます。天気も上々、ですが、また乗換え。すると左の車窓には濃い青色のオホーツク海、右にはピンクの可愛い花をつけたジャガイモ畑が広がります。やっとこ清里町に着きました。
「清里町で本格焼酎を造ろうとした1975年当時、町の畑の半分がジャガイモ畑でした。片栗粉を作るための澱粉量の多い品種です。酒造りには澱粉量の多いものが適当ですので、清里町特産の芋は焼酎造りにも最適でした。当時は「紅丸」(赤皮、メークイン似)で、最近は「コナフブキ」(男爵似)という品種で焼酎を製造しています。ジャガイモは日光に当たると緑化し、えぐみが出て、焼酎にすると青臭い味になってしまいます。緑化予防も兼ね、収穫後すぐの芋を使っています。今はまだ、土の中で成長中ですが」と蔵元さん。清涼な空気と一面のジャガイモ畑に高く青い空。この自然の中ですくすくと育つジャガイモ達。それが蔵元さんの手でお酒になり、私達を幸せにしてくれます。自然のありがたみを改めて実感しました。
次は清里町から電車で約7時間(北海道は本当に広い!)、情緒溢れる小樽に着きました。
「ジャガイモ、蕎麦、韃靼(だったん)蕎麦、かぼちゃ、栗、昆布、自然薯(じねんじょ)、米、酒粕、燕麦(えんばく)など、まだ試験段階のものもありますが、北海道各町の人々がそれぞれの特産品で焼酎を造ることを目指し、様々な原料の焼酎が提案されています」と蔵元さん。まだ収穫の季節ではないので、製造は停止しています。蔵は静かで寂しい気がしましたが、タンクに眠る酒、麹室で微かに香るお米の匂い。秋から始まる製造に、蔵が体を休めているような感じがしました。「北海道の焼酎造りは地元の原料を使うことを基本としています。その町の自慢の特産品で造る本格焼酎です。その内、『九州のさつま芋焼酎と北海道のじゃが芋焼酎』と呼ばれるようになるかもしれませんよ」と嬉しそうに語る蔵元さん。北海道の芋焼酎はクセが無く、後味あっさりでいつの間にかにクイクイ喉を通っていきます。
北海道には現在、本格焼酎の蔵元は7場あります。「地元の特産品を使って本格焼酎を造る」その考えは北海道に根付いているようです。九州の芋焼酎は北上を続け、北海道の芋焼酎は南下を続ける。日本の真ん中で南北芋焼酎の味比べ、それも面白いかもしれません。