うんちくBOX

第10回 昔の文献にみる本格焼酎&泡盛

 新しい年、お屠蘇の酔いがまわる前に、初詣では済まされましたか? 長い行列を待ち、幸せと健康を祈って、じっと手を合わせる…昔から変わらない、切なる人々の光景です。

 神詣での元祖と言えば、お伊勢参りが挙げられるでしょう。一生に一度の参拝を目指して東海道をテクテクと歩いたのは、ご存知弥次さん喜多さん、『東海道中膝栗毛』の登場人物です。昨年末に作者の十返舎一九の手紙が発見され、この作品を書くために取材旅行をしていたことが分かり、話題になりました。
 お伊勢参りのさまざまな逸話を採集していた一九は、焼酎の笑い話も登場させています。喜多さんが商人から酒を買う場面です。「商人『ハイ、焼酎は入ませぬか、白酒あがりませぬか』、北(喜多)八『ヲット、そのせうちうを少しくんな…』(と、茶碗に注がせて銭を払い、かの焼酎を足に吹きかけ)、『よしよし、これで草臥(くたびれ)が休まるだろう』」。
 この時の焼酎は、おそらく酒精の強い粕取り焼酎です。重労働をする人足(にんそく)が気付けにあおっていましたが、たいていは刀傷などの消毒用に使われていました。その薬効を喜多さんは勘違いしたのでしょう。

 果たして喜多さんの足の疲れは取れたのか、大いに謎ですが、今は気軽に味わえる本格焼酎が山ほどあります。あったかいお湯割りで暖を取り、体の中から一日のくたびれを癒したいものですね。

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