第7回:焼酎と季節感
意外!焼酎は“夏”の季語
日本のように四季がはっきりしていると、冬には温かい日本酒、夏には麦酒といった具合に、季節毎に好まれるお酒にも特徴があるのが通例でした。
その考え方でいくと焼酎はいつの季節の酒だと思いますか。俳句の世界では意外なことに夏の季語になっています。はっきりとした理由はわからないのですが、1713年に出版された江戸時代の百科事典『和漢三才図会』によると「気味はなはだ辛烈にして、疲れを消し、積聚を抑へて、よく湿を防ぐ」と書かれています。要するに夏の暑さに疲れた身体に活を入れ、精力をよみがえらせる酒と位置づけられていたのでしょう。
暑いときに熱いお茶を飲むと気持ちが落ち着くのと同様に、焼酎の強い酔いが暑さを忘れさせたり、胃を刺激して食欲を増伸させてくれるのも事実です。
しかしもうひとつ理由がありそうな気がします。江戸時代であれば、焼酎は日本酒に比べると滅多に口にできない珍重すべきお酒でした。造られるのも田植え後のさなぶりの頃が主流。つまり、初夏のお祭りのときに登場するお酒だったのではないでしょうか。冷暖房完備の都会で生活していると年々季節感は薄らいでいきますが、週末には江戸の町民に思いをはせながら本格焼酎で夕涼みとしゃれてみるのも乙なことです。