第6回 「本格」の一本道
NHK大河ドラマ「篤姫」放映を受けて鹿児島は今、篤姫ブームに沸いている。篤姫にちなんだ焼酎もゾクゾク登場し、好評のようである。篤姫の魅力は、幕末の激動の時代、御台所としてふるさと薩摩を相手に徳川家の存続のために戦い、動じることなく「女の一本道」を突き進んだその生き様にある。
最近の食品の偽装表示、とりわけ「老舗」の名声をバックにした偽装事件などを見聞きするにつけ、一本道を突き進むことの難しさをつくづく思う。伝統を標榜する本格焼酎にとっても他人事ではないが、本格焼酎業界が先んじて偽装?防止の手を打ってきたことは意外と知られていない。
酒税法は酒税を徴収するための法律であることから必要最低限の表示が義務づけられているだけで、原材料や添加物に関する表示の義務はなく、その表示はそれぞれの業界まかせになっている。そのなかで本格焼酎業界は、原料はもとより、すべての添加物表示を義務づける表示基準を作成した。蒸留酒に添加物を認めた酒税法上の表示グレーゾーンを取り除き、消費者にガラス張りの情報を提供しようとするものであった。平成14年には添加物を加えた焼酎は「本格」の名にふさわしくないということで「本格焼酎」と呼べないことにした。「本格焼酎」というと、本家とか元祖とかと同じく単なる自己満足の呼び方と思われがちだが、れっきとした基準に基づいての呼称なのである。
平成18年の酒税法改正では、これまで酒税法で乙類と甲類は「しょうちゅう」に一緒にくくられていたものを、天下晴れて単式蒸留焼酎として独立することが実現した。実に甲乙表示が始まってから半世紀を要しての悲願達成であった。
偽装防止は法律遵守に留まらず、誤解を招かないようにすることが肝要である。本格焼酎業界の発展は道を踏み外しかねないグレーゾーンを先んじて取り払い、消費者の信頼を裏切らない体制作りに取り組み、「本格」の一本道を歩いてきたことと無縁ではない。