第36回 女子学生がなぜ焼酎?
“春秋謳歌”の連載は鹿児島大学に焼酎学講座が開講した平成19年の4月に始まった。寄附講座として開設された焼酎学講座は平成23年4月、農学部附属焼酎・発酵学教育研究センターとして拡充強化され、現在に至っている。この連載は今春、定年退官を迎える筆者にとって焼酎学学生と歩んだ6年間の記録でもある。
この間、意外だったのは女子学生の人気が高いことである。年々女性が増え、今では女子学生のほうが多くなっている。女性の社会進出が進み、最近では20代前半の男女別飲酒率は女性が男性を上回っているというが、それを実感する毎日である。
それにしてもどうして若い女性が焼酎に惹かれるのだろう。焼酎は強い酒、蒸留酒でありながら穏やかでやさしい側面を持ち、この二つが奇妙に同居している。芯が強くて奥ゆかしくてそれでいて温かく包み込んでくれる。こんな男性はちょっといそうにない。女性なら大和なでしこの世界である。時代をエネルギッシュに謳歌する若い女性たちが、大和なでしこの焼酎の世界に惹かれるとしたら分からないでもない。
もともと、万葉の昔に見るように、女性たちはおおらかに愛を歌い、高らかに恋を語っていた。日本的女性観の形成に大きな役割を果たしてきた忍従の美徳がもともと女性の属性だったわけではない。忍従の美徳は、オトコ社会が作り上げた女性像にすぎない。
オトコ社会の崩壊は女性の原点回帰のエネルギーを蘇らせた。チャラチャラした男よりも、飾らない自然に滲み出る優しさを持ち、おだやかでおおらかで思いやりがあり、朴訥な人がいい。それを酒に求めるとしたら本格焼酎しかない?
最近は女性が企画した女性向けの焼酎も話題を呼んでいる。焼酎学講座の女子学生が、どのような酒の世界を作ってくれるのか楽しみである。そのうちきっと男性が飛びつく酒を造ってくれるだろう。思えば昔、酒つくりは女性の仕事だった。