うんちくBOX

第6回 昔の文献にみる本格焼酎&泡盛

 遅れてやってきた今年の残暑、汗をふきふき暦を見ればもう旧暦の晩秋、九月になりました。突き抜けるような夏空が色あせ、向日葵(ひまわり)の黄色が懐かしく感じられます。でも、秋には秋の美しい黄色があるのを思い出してみましょう。日本でこよなく愛されている「菊」の高雅な黄色です。

 実は黄色い菊の花には、本格焼酎と切っても切れぬ関係があります。江戸時代中期に書かれた動・植物学書『本朝食鑑』(ほんちょうしょっかん)見られる肥後国(現・熊本県)産「菊花酒」の解説を読んでみましょう。
 「(菊の)黄花ヲ用テ、コレヲ焼酒中ニ浸シ、数日ヲ経て煎沸シ、貯ヘコレヲ甕中ニ収メ、氷(砂)糖ヲ入レ数日シテ成ル」。この菊花酒は、殿様の進物用に使われ、目を良くし、頭痛を和らげ、婦人病にも効いた、と絶賛されています。
 こうした菊花酒造りは、焼酎文化圏ならではで、同じく菊花酒を造った伊賀国(現・三重県西部)では焼酎を用いていないことからも分かります。
 謎はこのときに使われた焼酎が、どんな焼酎であったのか…江戸時代であることを考えると粕取り焼酎が有力ですが、球磨焼酎のお膝元ですから、米焼酎の可能性も捨て切れません。記録が残っていないのが、何とも残念です。
 肥後の殿様ご用命の菊花酒…米焼酎を使って、贅沢に造ってみてはいかがでしょうか。もともと九月九日の重陽の節句に長寿を祈って飲む酒です。ますます寿命が延びそうな、豪奢な気持ちが味わえそうですね。

 『本朝食鑑』に書かれた効用を信じて、米焼酎をはじめ、お好みの本格焼酎で菊花酒を造ってみるのはいかがでしょうか。そもそも菊花酒は、それを飲んで八〇〇歳まで生きたという中国の故事に由来します。江戸時代の人々は、九月九日の重陽の節句に長寿を祈ってそれを味わっていたので。

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