第17回:世界の中の焼酎(2)
風土の多様性が生んだ焼酎のバラエティー
さて、先週に引き続き、日本の焼酎固有のもうひとつの特徴をご紹介しましょう。それは、本格焼酎という名前の下にいろいろな原料で造られるお酒が存在していることです。
みなさんよくご存じのものだけでも、麦・米・いも・そば・酒粕などがありますが、他にも黒糖・胡麻など、現在では全部合わせると60種類くらいの焼酎が造られています。本格焼酎のように原料の特徴が明確なお酒で、このようにバラエティーを持っている酒は世界的にも極めてまれです。スコッチであれば麦芽、ラムはサトウキビ、テキーラは竜舌蘭と普通はそのカテゴリーのお酒の主原料は決まっているものです。
この背景には日本の気候風土の多様性の影響もありそうです。同じ九州でも鹿児島は亜熱帯に近い温暖な土地ですが、福岡は冬場の冷え込みが厳しい。当然酒造りの条件は異なります。
奄美諸島の黒糖焼酎も、球磨盆地の米焼酎も、壱岐の麦焼酎も、シラス台地の鹿児島からいも焼酎が生まれたのも、最初はそれしかお酒に回せる原料がなかったからに違いありません。なんとかしてお酒を造りたい。飲みたい。そういう先人達の熱い思いが様々な原料から焼酎を造るという活力を生み出したのでしょう。