第43回:焼酎タイムカプセル
トンネルの中で熟成の時を待つ本格焼酎
道路公団の民営化に絡んで未着工路線をどうするかという問題があちこちで論議を呼んでいる。実はこれと同じようなことは、国鉄が民営化されてJRになったときにも起きている。工事途中で建設中止になった路線も多く、トンネルはできているのに鉄道が敷かれなくなったところも全国に何カ所かあるのだ。
中部九州を横断するはずであった高森線もそのひとつである。ここで面白いのがその完成したトンネルの使い道である。なんと本格焼酎の貯蔵庫になっているのだ。1kmを超える長いトンネル内部は年間を通して温度が15度前後でほぼ一定である。しかも適度な湿度も保たれているし太陽光も完全に遮断されている。焼酎を熟成させるのに最適の空間なのだ。
地元高千穂の焼酎メーカー2社がこのトンネルを貯蔵庫にしていて見学することも可能だ。そのうち1社が販売しているMYカメ焼酎の企画も面白い。18Lのカメで焼酎の新酒を購入し3~10年の後に届けられるという企画だ。すぐに飲んでも美味しい本格焼酎であるが、熟成された味わいはまた格別。静寂さの保たれたトンネルの中で悠久の眠りに就く焼酎の姿を思い描くのもまた楽しい。
数年後に飲むために今から焼酎をキープするのも乙なものだ。