第41回 焼酎文化でおもてなし県民条例
例年、暮れになると暗い一年を振り返るニュースが多く暗澹とした思いに駆られるが、久々に明るい話題が飛び込んできた。昨年12月18日の鹿児島県議会で「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし県民条例」が可決された。施行は今年1月1日からである。これまで「乾杯条例」は全国の自治体で施行されているが、焼酎産業ならびにその関連産業の振興まで盛り込んだ条例は初めてである。
鹿児島県における焼酎関連産業は一次産業や焼酎製造業だけではなく、包材・燃料・建設・機械等の二次産業、観光・運送業・宿泊施設・料飲店・卸・小売業等の3次産業など裾野が広く、焼酎産業振興の波及効果はきわめて広い。この芋焼酎、黒糖焼酎ならではの広がりが焼酎文化を築いてきた。
いつもは平穏な日常に埋もれている“文化”が凄まじいエネルギーに支えられていることを痛感させられたことがある。平成8年、WTO酒税紛争による焼酎の大幅増税を阻止しようと鹿児島県全土が燃えた。結果は日本の敗北に終わったが、その後の度重なる増税を乗り越えてきたのは紛れもなく“鹿児島、そして日本に根付いた焼酎文化”のおかげであった。「焼酎おもてなし条例」は、いつもは茫漠としている焼酎文化に形を与えたものともいえる。
かつて島津斉彬公は、“良質の芋焼酎を造れば米の消費を減らすことができる。芋焼酎を造ることは田んぼを開くことと同じであり、サツマイモの加工品は薩摩の大いなる特産品となろう。サツマイモの活用は小さなことのように思えるが、大いなる国益で経済の要になる”として、製造法の改良を指示した。斉彬公の夢が実現した今、焼酎を起爆剤に地域産業の活性化を図ろうとする条例が生まれたことに感慨深いものがある。清酒と焼酎の“國酒プロジェクト”が始動する中、まずは足元から固めていこうとする動きが全国に広まることを期待している。